Masukたしか裏庭にガゼボがあるから、早くそこへ行きたい……ほとんど人通りのない廊下を通り抜けて裏庭のガゼボにたどり着く。
そして中にあるベンチに座り、項垂れた。
「はぁ……はぁ…………っ」 荒い息を整えて、今の状況を頭の中で整理してみる。一緒にいたナタリアという女性と結婚したいから、私との婚約を破棄したいと言うヤヌシュの顔は、今まで見た事もないくらい真剣で蕩けるような表情だった。
私には決して向けられることのなかった顔――。
本当に真実の愛を見つけたのね。
それは幼馴染として祝福してあげなければならなかったのかもしれない。
ただ、何もあのような皆がいる場面で言わなくても……という気持ちが先立ってしまい、喜んであげる事が出来なかった。
しかもしっかりと子供まで作っていて、どんどん悪者扱いされていくし、いたたまれなくなって走り去ってしまったけれど。
……正直、今の私の気持ちとしては、婚約がなくなって肩の荷が下りたような気持ちだった。
やはりずっと好きだった人がいるのに違う人と結婚なんて、無理だったのかもしれない。
いい夫婦になれるように必死で努力してきた自分がいるから、こんな結果になってしまって悔しい気持ちもあるけれど、今考えるとこのままヤヌシュと結婚してもいい夫婦になる事は出来なかっただろうなと思う。
今は解放感でいっぱいで、ホッとしたのか涙が出てきてしまうほどに。
「ドミニク様……」愛する人を想いながら涙を流している私の元へ、本人が息を切らして走ってきたのだった。
「ティナ!何があった?!」「ド、ドミニク様……」
まずいわ……こんな状況でさっきの騒動を話したら、私が婚約破棄されて泣いていると思われてしまう。 「さっきサロンに戻ったら、皆が君の事を話していて……ヤヌシュ君に婚約破棄をお願いされて了承していたって……」 ああ、ここでは話すつもりはなかったのにバレていたなんて。 「ドミニク様、あの、私……」「こんなに涙を流して…………可哀想に……」
「違うのです、これは……」
私がみなまで言い終わる前に、ドミニク様の大きな腕に抱きしめられてしまう。あまりに突然の出来事に頭が追い付かず、何を話そうとしていたのかも忘れて、腕の温もりに身を委ねてしまう。
「いいんだよ、何も言わなくても。今日は夜会どころじゃないだろうから、このまま帰ろうか」 せっかくオシャレをして好きな人と一緒に夜会に来る事が出来たのに――。一生の思い出にと張り切った私の努力は夜会に参加する事も叶わずに、帰るしかなくなってしまった。
私は婚約破棄の事なんかよりもその事の方がショックで、また涙が零れてしまう。
ドミニク様はそんな私の額にそっとキスをしてくれた。
どこまでも子ども扱いなのね……そう思いながらも彼の優しさに少し胸が温かくなったので、大人しくそのまま帰る事にした。
でもこの時、私の中に眠る魔女の血によって庭園の植物たちが嬉しそうに花開いていったのを知る由もなかったのだった。
~・~・~・~
ドミニク様に送られて無事に邸に帰ってきた私は、帰ってくるなり自室に直行した。
両親はあまりに早く夜会から帰ってきたので不審に思い、すぐに私の部屋に来て何かあったのか聞いてきたので、夜会での出来事を全て話す事にした。
どの道婚約破棄だなんて、お父様やお母様に黙っておく事なんて出来ないものね……家同士の問題でもあるし。
「……そんな事があったなんて…………すぐに陛下にも婚約解消を了承してもらうべく申し出る。そしてフェンデルバーグ家に通達するよ。おそらく今日の出来事を見ていた者が沢山いるし、早急に婚約は解消になるだろう」「夜会でそのような事をしてくるとは、なんて恥知らずな……!ただでさえ婚約もこちらが断れないと分かっていて持ち掛けてきたのは、フェンデルバーグ家の方なのに……もうあちらの要望に付き合う必要はありません」
お父様もお母様も私の事を想って、酷く怒ってくれている。本来この婚約は、私の家と繋がりを持ちたいフェンデルバーグ家から持ち掛けられたもので、両親としては幼い時から婚約に縛られるような事は望んでいなかった。
お父様のお父上、先代のお祖父様は、自然豊かなヴァッセル伯爵領での酪農業に目を付けて発展させ、今では国で扱う食肉類は流通されている半分近くが我が領地で育てた家畜でまかなわれているほどの酪農王国を築き上げ、莫大な財を築いたのだ。
その財で伯爵位まで昇りつめ、王家としてももはやヴァッセル家を無視出来ない程の力をつけている。
そんな我が伯爵家に目をつけたフェンデルバーグ公爵が、年の近い自身の令息と私との婚約話をお父様に持ち掛けてきたのだ。
先代国王陛下の側近であり、今は宰相として権力をふるう閣下に持ちかけられた話だったので、こちらとしても無碍にする事は出来ず、渋々了承した形だった。
両親の方が理不尽な婚約破棄に烈火のごとくお怒りね……。
2人には、私にも好きな人がいて解放感に浸っているとは口が裂けても言えないわね。
なんだか申し訳ない感じがしてしまう。
それでも両親の愛が嬉しい。
ようやく望まない婚約から解放された。
ドミニク様にもとても迷惑をかけてしまったけれど……あのガゼボで抱きしめてもらった時、天にも昇るほど嬉しかった。
私が結ばれたいのは、ドミニク様以外には一生あり得ないと実感した瞬間でもある。
でも、額にキスをされた時、どこまでいっても私は子供枠から出ないんだなというのも実感したから……ヤヌシュにも子供扱いされて、あんな公の場で婚約破棄宣言されてしまったし、ますます自分は行き遅れるでしょうね。
公衆の面前で悪者にされてしまっては、この先もらってくれる殿方も現れないでしょう。
望まない結婚からは解放されたけれど、この先の未来を考えると、どうしても悪い方向に考えてしまいがちになる。
「このまま行き遅れた娘が邸に居座ってもお父様やお母様に迷惑をかけてしまうし、私、修道院に入るべきかしら…………」 私がポツリと呟いたのを聞いた両親は、顔を真っ青にして固まってしまったのだった。 「何を言っているんだ!」「そうですよ、ティナ!そんなところへ私達が行かせるものですかっ」
「ご、ごめんなさい!何でもないですから!今日はもう休みます」
そう言って、何とか両親を部屋から追い出した。本気で思っていたわけではないけれど、二人のあの表情を見て自分の発言を心底後悔する。
軽はずみだったわね……どうしてもこれからを考えると悪い事しか思い浮かばない。
こういう時は寝てしまおう、そして頭を切り替えるのよ。
そうしてその日は疲れもあったからか、深い眠りへと落ちていった。
この時の私の発言が、事態を思わぬ展開へと動かしていくとは夢にも思わずに。
「ティナ……ゆっくりお休み」 さっきまで私に欲望をぶつけられ、散々体に快楽を刻まれたティナは、ゆっくりと瞼を閉じていく。 お酒が回ってもう起きていられないのだろう。 徐々に寝落ちていく可愛い姿を見守りながら、彼女の額にキスを落とした。 「ド……ム…………」 眠りに落ちる刹那、私の名を呼び意識を手放した。 愛する婚約者であり、偉大なる白の魔女……彼女を守る為に、自分も戦わなくては。 彼女の中から自分の怒張を引き抜き、秘所からあふれ出る精を綺麗に拭き取り、ティナが健やかに眠れるように体を綺麗に整えていく。 そして自分の服装も整え、まだ皆がいる酒宴の場へと戻って行った。 「遅くなって申し訳ございません。ティナが眠りました」 「ドミニク!遅かったな、そうとう体調が悪いのかと皆で話していたのだ」 私が戻ると一番に声かけてきたのは兄上だった。 もう少し遅かったら誰かが様子を見に来ていたところだったか……危なかったな。 ふと視線を移すと、バズズ殿がソファの寄りかかりながら項垂れている姿が目に入ってくる。 「皇帝陛下、バズズ殿は……」 「ああ。あいつは白の魔女を酔わせてしまったので飲んだくれているのだ」 「え?!」 「騎士団長を務めてから、自分が守るべき者を守れなかったのは初めてだからな。はっはっはっ」 「はあ……」 バズズ殿のような凄腕の者でも今回の件は予測できなかっただろうから気にするなと言いたいところだが……きっとプライドの問題なのだろうな。 私は少し哀れに思い、バズズ殿に声をかけた。 「バズズ殿」 「う…………ティナ、さま……」 「………………」 恐らくバズズ殿はお酒に弱いのだろうな。 帝国の騎士団長が不慣れなお酒を煽るほど……しかしいつもは「白の魔女様」と呼んでいるのに「ティナ」の名を——。 ざわざわと嫌な予感が体を駆け巡る。 まさかバズズ殿はティナを……そんなことを考えていると、セリス嬢に声をかけられて我に返った。 「閣下」 「ああ、セリス嬢か。バズズ殿はすっかり潰れてしまっているのだが」 「まったく、団長もだらしない。放っておいて大丈夫です、その内復活しますので」 「そ、そうか……分かった」 回復力も並みの人間ではないということか。 「白の魔女様は大丈夫でしたか?」 「ああ、かなりお酒が
「んんっ、ん――……っ」 ここは王宮で、まだ皇帝陛下や国王夫妻、シェリアン様など皆が集まってお話されているというのに……私たちはベッドで乱れ、互いの唾液を絡ませる水音をくちゅくちゅと響かせていた。 「は……ぁ…………んぅ……」 「ティナ……君は私だけのものなのに」 ドミニク様の瞳が不安に揺れているように見えて、まるで独占欲を分からせるように、自身の昂りを私の股座に押し付けてくる。 「んんっ……や、ぁ……」 「イヤだって言いながら、自分から腰を押し付けているよ……やっぱり分からせないと」 まだドレスを着たままだったスカート部分をたくし上げ、下着を脱ぎ去り、私の恥部を露わにした。 そしてそこにふーっと息を吹きかけてくる。 「ひっ、やぁぁ……っ!」 「ひくひくしてる。可愛い。ここも私のものだ」 舌なめずりする音が聞こえてくるようだった。 そして次の瞬間、彼の舌が私の秘所を這っていく。 「ひゃあぁぁ」 全身が粟立つ快感。 指をねじ込まれ、気持ちいい箇所を的確に刺激し、腰が自然と浮いてしまう。 ダメ、気持ちいい……もっとソコをグリグリしてほしい……そんな私の気持ちが聞こえたかのように、ドミニク様の指がうごめく。 「あっ、あっ、らめ、イクッ、イッちゃ……うぅ……~~っ!!」 あっという間に達し、目の前がバチバチと弾けた。
「いや~~~ここの酒は美味いな!そう思わないか、セリス?」 「はぁ……陛下、飲み過ぎては会話も何もありません。閣下とお話したかったのでしょう?」 「相変わらずお前は小言が多いな。そんな事で好いた者の心を射止められるのか?」 「わ、私の事は放っておいてください!」 皇帝陛下は自身の部下であるセリス嬢に対して悪態をついている……これは止めるべきなのかしら。 皇帝と騎士団の隊長なのにとても距離が近くて親しげな事に驚いてしまう。 そこへドミニク様が近づき、陛下とセリス嬢の間に入った。 「陛下、私にお話しがあると仰っておりましたが、どのようなお話でしょうか?」 ドミニク様はセリス嬢に目配せをする……今のうちにその場を離れるように、さり気なく助け船を出したのね。 さすがドミニク様だわ。 やり方もスマートだし、優しくて見惚れてしまう。 セリス嬢はその場から去り……彼女の視線が…………ドミニク様を見る目が熱を帯びている。 やっぱり気のせいではなく、セリス嬢はドミニク様の事を……だからと言ってドミニク様が他の女性のところに行くとは思っていないけど。 でも胸がじくじくしてしまう。 こんなに素敵なのですもの、やっぱりモテるわよね。 私はモヤモヤする気持ちを抑えようと、果実水をちまちま飲んでいく。 「クリスティーナったら、そんなに果実水が美味しいの?」 一緒にソファに座っていたシェリアン様が不思議そうに聞いてくる。 向かいに座る王妃殿下も同じような表情をされているのを見て、自分の行動のおかしさに気付いたのだった。 「えっと、凄く美味しくて!」 「ふーん。まぁ、王宮の果実水だもの、美味しいに決ま
「ふむ、あなたはとても聡明な方だ。私の考えを見抜いていたとは……私があなたに会いたかった理由は一つ。オブシダンについて聞きたかったからだ」 固唾を飲んで皇帝陛下からの言葉を待つと、私が良く知る人物の名前を口にしたのだった。 「ダンについて?」 「そう。ダンについて。彼女とは連絡を取り合っているのか?」 「は、はい。先日まで彼女の庵で過ごしていましたし」 「何?!彼女の庵はまだあの木の上にあったか?!」 「はい……そのままでしたわ」 「そうか――」 皇帝陛下は大きな大きなため息を吐き、その場にしゃがみ込んでしまう。 どうされたのかしら……ダンと皇帝陛下が知り合いなのは知っていたけれど。 ダンも知り合いのようなものだと言っていたし、陛下もこんな反応をしているのだから二人は顔見知りである事は間違いない。 でも明らかに陛下の方が動揺していらっしゃるわ。 「あの、ダンが庵に住んでいると、何か都合が悪いのですか?」 私の質問に顔を上げたシルベリオ皇帝陛下は、全く都合が悪いというような表情ではなかった。 むしろ瞳がキラキラしていて、何かを期待しておられる? 「違うんだ、都合が悪いのではない。私は嬉しいのだ。以前は東の森に行くと会えたのに、最近は全く会えず……あの辺りはエデンを守る為に近づく人間がいれば迷いの森になる」 「迷いの森?エデンにはたどり着けないようになっているのですか?」 「そうだ。しかし私と出会い、ダンが呪いを受けてから力が不安定なのか、エデンが人間に見える日が増え……ダンの庵も人間の目に留まるようになった。だから私は東のエデンへの立ち入りを禁止にする法令を施行したのだ」 知らなかった……皇帝陛下に出会ってからダンが呪いを受けたという事は、二人の間に何か事件があったのかもしれない。 やはり彼女の体が小さい事で、少し力が不安定になっているのね。 ダンはあまり気にしてないようだけど、どうにかして呪いを解いてあげたいわ。 「どうにかして彼女の呪いを解く方法はないのでしょうか?」 「あるにはある……しかしその方法を知り、ダンは……アイツは姿をくらました」 「え?!どうして……」 「まぁ、方法が特殊だからだろうが……私の方は気持ちは決まっておると言うのに……」 陛下はそれについて聞かれると、口ごもりながらブツブツ言っ
「お嬢様、とてもお綺麗ですわ」 リジーが王宮への支度が整った私を見て、感嘆の声を上げた。 今日は王宮でイースナビア帝国の皇帝陛下にお会いする日……我が国との友好関係の為にも身なりもしっかりと整えて悪い印象を与えないようにしなくては。 私の髪はプラチナに変化している為、今までのドレスの色合いよりも少し薄めの色の方がいいと判断したリジーが、オフホワイトのマーメイドドレスを選んでくれたのだった。 袖口はとても長いベルスリーブなので、一見すると魔女のローブのようにも見える。 「素敵ね……やっぱりリジーのセンスは素晴らしいわ」 「お褒めに預かり光栄です」 「うふふっ、ありがとう」 そんなやり取りをする私たちのもとへ、ドミニク様が顔を出した。 「準備は終わったかい?」 「ドミニク様!」 「ティナ……!とても素晴らしいよ……」 ドミニク様が足早に歩み寄り、私を腕の中へ閉じ込めた。 そして頬にキスをしながら「王宮へ連れて行きたくないな」と呟く。 「ドミニク様……リジーがいますわ」 「もう退出してるよ」 「え?」 周りを見回してみると本当に彼女の姿がなかったので、驚きで開いた口が塞がらなくなる。 いつの間に……まったく音がしなかったと思うのだけど。 「おとぎ話に出てくるようなお姫様みたいだ」 彼が一言呟いた後互いの唇が重なり、私の言葉は彼の口内へと吸い込まれていったのだった。 リジーが綺麗にお化粧をしてくれたのに……でも甘美な誘惑に抗う事が出来ない。 ドミニク様に求められたら吸い込まれるように唇を重ねてしまう。 「んっ……ぁ…………」 「ん、ティナ。行くのやめようか……」 「だめ、です。今日は、大事な日……だから……っ」 何とかドミニク様を引き離そうと試みるけれど、彼の甘い愛撫に体が反応してしまって、どんどん力が入らなくなってしまう。 このままじゃダメ……! 「ドム……めっ!」 私の言葉にドミニク様は体がピタッと止まったまま動かなくなった。 自分で止めている……ようには見えないわね。 「ご、ごめんなさい!魔力を使ってしまいましたわっ」 「いや、いいんだ。まさか子供に叱るように言われるとは思わなくて」 すっかり熱も引いた私たちは、今の内に王宮へと向かう事にした。 少し乱れた私のドレスをリジーが整えてくれて、その間も
「ドミニク、よく来てくれたな。クリスティーナも……先日は世話になった」 翌日さっそく王宮に赴き、広めの応接間へ案内された私たち。 そこには国王夫妻にディクセル王太子殿下やシェリアン王女殿下も待っていて、真っ先に陛下が挨拶をしてくれたのだった。 「兄上、みんなも……集まってくれて感謝する」 「お前の方から大事な話があると言ってきたのでな……私との話で答えが出たのかと思ったのだが」 「はい。そして今日はもう一つ大事な話もあり、ティナも連れて参りました」 「そうか。まずはドミニク、お前の答えを聞かせてくれ」 ドミニク様はこちらをチラリと見られたので頷くと、陛下の方へ向き直り自身の気持ちを話し始めた。 「王族に戻る事を決めました。ティナとも話し合い、それが最良かと考えた次第です」 「そうか。クリスティーナもそれで良いのだな?」 「はい。ドミニク様の意志が私の意志ですので。私もようやく全ての力が解放されましたから……彼を、そしてこの国を全力で守りたいと思っております」 「全ての……?そう言われてみれば髪の色が……古の魔女が復活したという事か」 私の言葉に陛下が少し複雑な表情をした。 始祖の魔女の力はとても強力なのは私自身も感じている……この力が利用される事になれば世界が恐ろしい方向へ向かってしまう。 「彼女につきましても東の皇帝陛下がこちらに接触してきました」 「なに?!」 ドミニク様は昨夜の出来事を皆さまに話していき、皆が一様に驚きを隠せない様子を見せる。 バズズ様は全く悪い人には見えなかったけれど、皇帝陛下はどのような方か分からないし、目的も不透明だ。 脅しをかけてくる事がないといいのだけど―――― 「ふーむ……バズズ騎士団長か。その名は聞いた事があるが、実際にはどのように感じた?」 国王陛下がドミニク様に尋ねると、ドミニク様はとても言いにくそうに答えた。 「恐らくまともにやり合えば、我が国の者で敵う人間はいないでしょう……皇帝陛下はそれ以上に感じました。昨夜ももしティナがいなければ我が邸の者たちは皆殺しにされていてもおかしくはなかった」 「それほどまで…………」 「しかし皇帝陛下の真の目的が分からないので、敵か味方かも分かりません」 私たちが緊張感を持って話をしているところに、突然応接間の扉が開かれ
中に入れた彼の指がグイッと曲げられ、一か所をトントンし始める。 指の動きに合わせて、体中に電流が走ったかのような感覚に襲われ、嬌声が大きくなっていった。 「あ?や、ソコ…………だめっ…………あぅ……ひっ、あぁっ……!」 「ここが気持ちいいんだね、もっと気持ちよくなっていいんだよ」 「あぅ……あ、あっ……何か、キちゃう……~~~っ!」 今まで感じた事のない快感が襲ってきて、必死にドミニク様の頭にしがみついた。 そして体が激しく痙攣したと同時に、目の前でチカチカと火花が散っていく。 「ふっ……んんっ…………」 今のは何? さっ
涙を拭ってくれた手は私の頬に添えられ、やがてほんの少し触れるだけの口づけをかわした。 初めてのキスが愛する人で本当に幸せ。 「ふふっ、顔が真っ赤だ」 「仕方ないのです!初めてなのですから……」 「ふーん。ヤヌシュ君ともしたことはないの?」 ヤヌシュとは本当に友達の関係だったし、向こうに子供だと言われていたので、そういう雰囲気にすらならなかった。 この年になってキスが初めてなんて、引かれてしまうかしら。 「ヤヌシュともした事はありませんわ。この年で初めてなんて、恥ずかしい」 「恥ずかしがることはないよ、誰にでも初めてはある。ティナにとってその相手が私で、本当に光栄だ
「ティナとヤヌシュ君の婚約は、陛下の了承の元、解消する事が無事に決定したよ」 婚約破棄騒動があってから2日後、お父様が朝の食事の席で私に報告をしてくれた。 「そうですか」 お父様からの報告にとてもホッとしている自分がいる。 あんな事があってこれ以上婚約者でいる事は不可能だし、何よりお互いに想い人がいる状態なのだから、この婚約は解消した方が良かったのよね。 ヤヌシュの方にはナタリア嬢のお腹に彼の子供が宿っている。 不誠実な事をしていたとは言え子供に罪はないから、彼らの幸せを祈る事にしよう。 「まさかもうお相手のお腹に子供がいるとは驚きだけどね……」 私はこの婚
王家主催の夜会当日―――― 両親に無理を言い、今日はとびきりオシャレをさせてもらった。 ごくごく薄い水色を基調としたプリンセスラインのドレスに、腕はオフショルダータイプのパフスリーブで、胸元は大胆にあけてみた。 髪は綺麗な真っすぐのホワイトブロンドだと両親にもよく褒められるので、あまり結い上げずにブルーグレーの蝶のモチーフの髪飾りだけを着ける。 首元には派手すぎないジュエリーと扇を持ってエントランスに向かうと、ドミニク様がすでに迎えに来てくれていて、私を階下で迎えてくれた。 「ティナ、凄く素敵だよ。見違えた……すっかり大人の女性だね」 ドミニク様は私のドレス姿